前立腺肥大症

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■前立腺肥大症の診断

前立腺肥大症は50歳以上の男性の5人に一人にみられます。しかし、その診断は痛みを伴うこともなく、比較的簡単に行われ、恥ずかしいことはありません。

診断でまず大切なのは自覚症状を伺う問診です。
前立腺肥大症診療アルゴリズムにそって病歴聴取、症状、QOL評価、身体所見、尿検査、尿流量測定、残尿測定、血液検査(PSA測定も含め)、前立腺超音波検査を行います。

症状は残尿感や頻尿などの前立腺肥大による刺激症状と、「尿が途切れる」、「尿の勢いが弱い」などの閉塞症状に分けられます。

自覚症状の評価を点数化したのが下記に示した”国際前立腺症状スコア”で、8点以上あれば治療が必要と言われています。 しかし、症状があっても神経因性膀胱などの他の疾患であることもあります。
その他に「過活動膀胱症状スコア」や「主要下部尿路症状スコア」があり、これも合わせて記入して頂き、複数の症状がある際にはどの症状に対し最も困っているのか評価します。

 つぎに、医師がお尻から指を入れて前立腺を触る”直腸診”が必要です。

正常の前立腺の大きさはクルミ位の大きさで、直腸診である程度の形状がわかります。しかし、直腸診では前立腺の後面のみを触っているので、全体像をみるには”超音波検査”が必要です。

前立腺全体の形態、重量(正常は約20グラム)までわかり、ときには前立腺がんの所見がみられることがあります。

大切なことは前立腺がんとの鑑別のため”前立腺特異抗原”(PSA)の約3ccの血液検査を行うことです。直腸診や超音波検査で問題なくてもPSAが高いことから前立腺針生検を行い、がんが発見されることがあるからです。

PSAの結果は当クリニックでは午前11:00までに採血すると翌日の午前9:00には結果がわかります。
円滑な診察を受けるには、来院時に尿検査ができるようにしておき、下記の症状スコア(IPSS、OABSS、CLSS)を記入したものや、薬の手帳、ご自身の病歴がわかるものを持参しれ頂くことをおすすめします。

国際前立腺症状スコア(IPSS)
過去一ヶ月の排尿について なし 5回に1回未満 2回に1回未満 2回に1回位 2回に1回以上 ほとんどいつも
1.排尿後、
尿がまだ残っている感じがありましたか
0 1 2 3 4 5
2.排尿後、2時間以内にまたトイレ
に行かねばならないことがありましたか
0 1 2 3 4 5
3.排尿の途中で、尿が途切れることが ありましたか 0 1 2 3 4 5
4.排尿をがまんするのがつらいことが ありましたか 0 1 2 3 4 5
5.尿の勢いが弱いことがありましたか 0 1 2 3 4 5
6.排尿開始時にいきむ必要がありましたか 0 1 2 3 4 5
7.床に就いてから朝起きるまで普通何回 トイレに行きましたか(回数=得点) 0 1 2 3 4 5
合計7点以下は軽度症状、同8~19点は中症状、20点以上は重度症状

前立腺肥大(図解)


■前立腺肥大症の保存的治療

前立腺肥大症は男性の国民病とまでいわれ、最近多くなっている疾患です。

「トイレが近い」、「残尿感」、「間に合わず尿をもらす」、「尿が途切れる」、「尿の勢いが弱い」などの症状を中高年の方でしたら、一度は経験しているでしょう。

前立腺肥大症は直腸診、超音波検査などで診断されます。そして、その治療方法は自覚症状の程度や前立腺の大きさ、残尿量によりいろいろとあります。各治療法には長所、短所がありますので、医師と十分相談して選択することが大切です。

治療方法には大きく分けて、経過観察と薬物治療の保存的治療、そして手術療法があります。

経過観察は症状が軽度の場合で以下の日常生活の注意点を守ると改善することがあります。すなわち、過剰にアルコールやコーヒーを摂取しない、強い香辛料はさける、尿を我慢しないですぐトイレへ行く、体を冷さない、就寝前にゆっくり入浴し身体を温める、長時間座るのをさける、便秘に気をつけることです。
また、抗ヒスタミン剤などのかぜ薬等で膀胱の収縮を弱める作用を持つものがありますので、現在服用されている薬をチェックすることも大切です。そして、どのような疾患にも言えることですが規則正しい食事と睡眠、そして適度な運動をすることが大切です。

薬物療法のうち、アルファー交感神経遮断剤は速効性があり、最も多く使用されています。この薬は膀胱の出口から前立腺部尿道にあるアルファー交感神経受容体を遮断することによって平滑筋の緊張をゆるめ、尿の出を良くします。
その他、抗アンドロゲン剤があり、男性ホルモンを抑えることにより数ヶ月で前立腺を小さくします。しかし、服用を止めるとまた大きくなり、副作用として勃起障害が出ることがありますので、注意を要します。

その他、漢方製剤、植物エキス製剤は 副作用はほとんどありませんが、効果が表れるには時間がかかります。なお、アルファー交感神経 遮断剤と他の薬を併用することもあります。薬で効果がない場合や、残尿がかなり認められる場合などは、手術が必要になります。



■前立腺肥大症の手術療法

前立腺肥大症の患者さんで症状が重い場合、薬物療法では完全に治ることはできません。

残尿がかなり認められる場合、残尿のため膀胱炎をくり返す場合、膀胱結石がある場合、腎臓の機能が低下している時などは手術が必要となります。

手術として最も一般的に行われているのが、尿道から内視鏡を入れて電気メスで前立腺を取り除く「経尿道的前立腺切除術」です。この手術で、尿道を圧迫している肥大した前立腺がなくなるので、劇的に尿の出が良くなります。泌尿器科医の間で前立腺肥大症の治療法の”Gold Standard”として高く評価されています。

治療効果は一番ありますが、残念ながら手術を受けた方が全員良くなるわけではありません。

合併症として出血や穿孔、尿失禁、尿道狭窄、精液が膀胱へ逆流する逆行性射精が出ることがありますので、良く理解された上で手術を選ぶべきでしょう。注意として、心筋梗塞や脳梗塞で抗凝固剤を服用されている方は、手術の時に出血量が多くなるので、数日前から薬を止める必要があります。

なお、切除した前立腺を病理組織学的に診断できますので、たまたま前立腺がんが見つかることもあります。「経尿道的前立電気蒸散術」は切除手術と同様に行う新しい手術方式です。
電気メスが厚型の切除ループになっており、高い電流にて前立腺組織を蒸散凝固する方法で、切除手術に比べて出血量が少ないです。
また、レーザーを用いた手術も行われています。レーザー治療は尿道から内視鏡を入れ、内視鏡の先端からレーザーを照射して、肥大した組織を焼き切る方法です。
この手術は出血などの合併症が少なく、患者さんの負担が低いのですが、切除手術に比べて効果は劣ります。

当クリニックでは入院施設がないため、手術に対応して頂ける病院を市内、地方に関係なくご紹介しています。


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