前立腺がん

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■急増している前立腺がん

前立腺がんはアメリカで最も多いがんで、男性のがんの発生率で第一位、死亡率では肺がんに次いで第二位を占めています。

日本でも年々増加しており、その増加率は全てのがんの中で最も高いのです。_前立腺がんの発生には老化による性ホルモンのバランスのくずれや欧米化した食生活をはじめとする環境因子が大きな要因となっています。

→※ また、遺伝子的要因もあり、父親が兄弟に前立腺がんになった人がいるとリスクは高まります。1親等以内の肉親に前立腺がんの人がいると、50歳以前の早い時期に前立腺がんになるリスクが高まるといわれています。

発生する年齢は五十歳代から増えはじめ、最も多いのが七十歳前後で、中高年を襲う特徴的ながんです。そのため、泌尿器科やがん関係の学会や雑誌では前立腺がんが常にトピックスになっています。

→※ 前立腺がんの初期には、ほとんど症状がありません。症状を訴えて病院を受信して、がんが見つかったときには、すでに進行がんであることが少なくありません。がんが進行して尿道を圧迫し始めると、排尿困難や頻尿、残尿感などの症状が出ることがあります。この症状は、前立腺肥大症とよく似ています。

前立腺肥大症の発生部位は主に尿道をとりかこむ移行領域からできるため、肥大してくると尿道を圧迫して排尿困難などの症状が出やすい傾向にあります。一方、前立腺がんは前立腺の外側の辺縁領域から発生するので症状が現れにくいのです。発生部位からもわかるように前立腺肥大症と前立腺がんが合併することはありますが、前立腺肥大症が「がん化」することはありません。

前立腺がんは骨に転移しやすい性質がありますので、腰が痛く整形外科を受診された方が、前立腺がんの骨への転移と診断されることもあります。また、前立腺がんは、他のがんに比べて進行が非常に遅く、発がんしてから臨床がんになるまで数十年かかると推定されています。

すなわち、青壮年期にがん細胞が発生し、二十〜三十年経って微小がんとなり、その後、数年以上経って臨床がんに成長するといわれています。

幸い治療方法は各進行度により確立されています。それでも早期発見、早期治療が重要なのはいうまでもありません。


■前立腺がんの診断方法

急増している前立腺がんの診断は案外、簡単に、そして短時間でできます。診断方法には、①腫瘍マーカーの血液検査、②直腸診、③超音波検査の三つがあります。

①腫瘍マーカーとは、がんがあると血液や尿に放出される特殊な物質のことです。前立腺がんの腫瘍マーカーとして、PSA(前立腺特異抗原)が用いられています。がんが小さいときには直腸診や超音波検査で発見するのが難しいので、PSAの血液検査が最も有効です。

当クリニックでは、約2ccの血液を採取し、結果は翌日判明します。PSAの値が高ければ前立腺がんが疑われますが、前立腺肥大症や前立腺炎でも高くなることがあります。

→※ 一般に前立腺生検の適応は、PSA値が4.0ng/ml以上の基準に行っています。

前立腺がんの初期の段階では自覚症状はありませんので、五十歳以上の男性の方は一度、PSAの血液検査を受けることをお勧め致します。

②直腸診は医師が肛門に指を入れて直腸壁からの前立腺の大きさや硬さ、圧痛などを調べる検査です。前立腺がんの場合には石の様に硬く、表面が不整などの所見があります。

③超音波検査は前立腺の断面を画面に映し出す検査をします。
前立腺がんでは、前立腺の形状がいびつになったり、内部が黒く見えたり、前立腺の各領域の境界がはっきり映し出されず、ボヤけた感じに見えます。超音波検査はがんが小さい場合には発見できませんが、直腸診ではわからない腹膜側の病変を見つけることができます。

いずれかの検査でがんの疑いがあれば、前立腺針生検を行って、確定診断をすることになります。

→※ 前立腺生検とは、前立腺の組織を採取して、顕微鏡でがん細胞の有無やがんの性質などを調べる検査です。

直腸から針を入れて前立腺組織を採取する方法と会陰から採る方法があります。外来で検査を行っている施設もあり、簡単にできます。

→※ 当クリニックでは、外来にて経直腸的生検を実施し、今まで2000例以上の針生検を行っております。

→※ 当クリニックでは、外来にて経直腸的生検を行っており、2015年5月時点、2000例以上の実績があります。

前立腺がんと確定診断された場合、CT検査と骨転移がないかを「骨シンチグラフィー」で調べ、がんの病期分類をして本格的な治療に入っていきます。


■前立腺がんの最近の治療法

最近、PSAが高く、前立腺針生検にて前立腺がんと診断される方が多くなっています。治療にあたっては、がんの進行度、がん細胞の悪性度、年齢や全身状態、QOL(生活の質)などを考えあわせ方針が決められます。

一番大切なことは患者さんが各治療の内容を把握して、 十分納得した上で治療を受けられることです。

  1. PSA監視療法
    治療をせず、経過を観察する方法です。悪性度が低いがんがごく少量認められ、すぐに治療を行わなくても余命に影響がないと判断される場合に行われます。約三ヶ月ごともPSA検査を行いながら、必要の応じて針生検を追加します。主治医と密にコミュニケーションをとりながら治療方針を確認することが大切です。

  2. 手術療法
    早期がんでは前立腺を全部摘出する「前立腺全摘術」が有効です。方法は前立腺とともに前立腺部の尿道、精のうを切除し、膀胱と尿道を寄せて縫い合わせます。しかし、患者さんの身体的負担が大きいため、75歳ぐらいまでの方を対象としています。
    開腹せずに腹腔鏡を用いて摘出することができ、出血量が少なく、術後の回復がかなり早くなりました。なお、手術の際、尿道括約筋を傷めることがあるため術後の尿失禁や、神経を損傷して勃起障害の後遺症が出ることもあります。

    →※ 現在では「ロボット手術(ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術)」が主流になっております。札幌市内では、六ヶ所の医療機関で行っており、当クリニックでは、患者様のニーズに合わせて医療機関をご紹介しています。

  3. 放射線療法
    放射線を前立腺に照射することで、がんを死滅させる治療法です。侵襲が少ないので高齢の方にも行えます。
    しかし、放射線により正常な細胞まで障害され、血尿や排尿痛、血便、倦怠感、尿失禁、勃起障害などの後遺症が出ることがありますが、治療が終われば徐々に回復します。

    →①IMRT(強度変調放射線治療):がん細胞に集中的に照射し周辺の正常組織にかかわる線量を最小限に抑えることができる。
    →②密封小線源永久挿入治療:放射線を出すヨウ素125を入れたカプセルを前立腺に埋め込み、体の内側から放射線を照射する方法があります。

  4. 内分泌(ホルモン)療法
    前立腺がんの70~80パーセントは男性ホルモンに依存しているため、その作用を妨げることで、がんを死滅させる治療法です。おもに進行がんが対象で、手術療法や放射線療法と併用することもあります。
    内分泌療法として男性ホルモンを分泌している精巣を取り除く精巣摘出手術、男性ホルモンの分泌を抑えるLH-RHアナログ剤の月に一度の注射、抗男性ホルモン剤や女性ホルモン剤の薬があります。

  5. 化学療法
    抗がん剤による治療法で、進行がんや内分泌療法で効果がない方に行います。


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