勃起不全(ED)

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■ED(勃起不全)とは

ED(勃起不全)とは、有効な勃起が得られず、また維持できないために、満足な性交が行えない状態をいいます。
従来、「インポテンス(性的不能)」という言葉で表現されてきましたが、「勃起障害」あるいは「勃起不全」を意味するED(Erectile Dysfunction)という言葉がより適切な表現であるとし、一般的になり つつあります。
ED(勃起不全)の患者さんは、日本では約900万人以上、米国では約3,000万人以上と推計されています。


■勃起のメカニズム

陰茎の中には、たくさんの神経と血管が集まっています。
性的刺激により興奮すると、海綿体に血液が流入・充満し、勃起します。

<海綿体へ血液が流入する仕組み>
陰茎へ血液を供給している動脈は4本ありますが、このうち勃起に最も重要な役割を果たすのは陰茎深動脈です。男の人が性的に興奮したときには、勃起をつかさどる神経は血液流入のバルブ(ラセン動脈と言われる)をゆるめ、同時に海綿体そのものもゆるむことで、血液が陰茎深動脈から海綿体にたくさん流れ込むように指示を出します。

<海綿体の仕組み>
陰茎には左右一対となった海綿体があり、これらはそれぞれ白く分厚い強靱な膜である白膜に包まれています。血液が海綿体に流入・充満することにより勃起が引き起こされます。勃起した時は、白膜の中で海綿体が血液に充満によりパンパンにふくれあがり、白膜から外に出て行く静脈は締め付けられ、海綿体から流出する血液量は非常に少なくなります。この状態が保たれることにより、完全勃起の状態になります。勃起の程度は、海綿体に入る血液の量と圧力によって決まります。


■ED(勃起不全)の原因

ED(勃起不全)の分類は、その原因により大きく3つにわかれます。
医師に相談して原因について知ることが治療の早道です。

<機能性勃起不全>
  • 心因性勃起不全(緊張やセックスの失敗に対する恐れなど)
  • 精神病性勃起不全
  • その他
<器質性勃起不全>
  • 陰茎性勃起不全(陰茎に問題がある場合)
  • 神経性勃起不全(脳から陰茎までの神経に問題がある場合)
  • 血管性勃起不全(陰茎の血管に問題がある場合)
  • 内分泌性勃起不全(ホルモンに問題がある場合)
  • その他
<混合性勃起不全>
  • 機能性勃起不全と器質性勃起不全の原因が混在するもの
    (原因となる疾患には、糖尿病、心臓病、腎不全などがあります。また、外傷、骨盤内手術やその他外科手術なども原因となることがあります。)

■ED(勃起不全)の主な治療方法

医師は、様々な治療方法の中から患者さんに適した治療方法を選択し治療します。 以下に、「クエン酸シルデナフィル」の他、AUA(米国泌尿器科学会)が「器質性勃起不全の治療ガイドライン」の中で効果のある治療方法として勧告している、3つの治療方法「陰圧式陰茎勃起補助具(EVD)、陰茎海綿体内注射、陰茎プロステーシス」と日本で古くから効果があると言われてきた「漢方薬」について説明します。

<クエン酸シルデナフィル(商品名:バイアグラ)>
性的刺激により興奮すると、勃起をつかさどる神経から一酸化窒素(NO)と呼ばれる伝達物質が放出されます。これが、陰茎の勃起に非常に重要な役割を果たしています。
NOは、生体内に広く分布する血管拡張因子であり、サイクリックGMP(cGMP)という物質を介して血管を拡張させる働きがあります。したがって、陰茎海綿体内では、NOが生産されると陰茎海綿体平滑筋を弛緩して海綿体内への血液の流入量を増大させて陰茎を膨張させます。性的刺激とNOの放出に始まる、この一連の働きにより陰茎が勃起します。
また、陰茎海綿体内には、cGMPを分解してしまうホスホジエステラーゼタイプ5(PDE5)という酵素が存在します。このPDE5はcGMPを分解して、活性がないGMPにします。クエン酸シルデナフィルは、この陰茎海綿体内のPDF5を選択的に阻害することで、cGMPの濃度を上昇させて陰茎海綿体平滑筋の弛緩反応を増強し、陰茎の勃起を促させる薬剤です。 クエン酸シルデナフィルは特に狭心症などに使われるニトログリセリン(内服、舌下錠、バップ剤)を使用している場合には、服用できません。

<漢方薬>
勃起不全の患者さんに漢方薬が使われることがあります。勃起障害は漢方でいう「陰萎」(いんい)という状態にあてはまると考えられており、加齢などにより身体の働きが弱ったり、心を使いすぎて疲れがたまったりする事により「陰萎」になってしまうとされています。それを補っていこうというのが漢方の基本的な考え方です。
漢方では、患者さんの「証」(しょう)に合わせて、最も適した薬が使われます。「証」とは患者さんの「体質・症状」をあらわす言葉で、同じ病気でも違った薬が処方されることがあります。

勃起不全の患者さんに使われる漢方薬をまとめますと、以下の表のようになります。

体質 ED(勃起不全)の他に随伴する症状 使用する漢方薬
体格は肥満しあるいは筋骨たくましくて精力旺盛 のようにみえるが、ED(勃起不全)で悩んでいるもの 大柴胡湯
(だいさいことう)
神経過敏で不眠、動悸、くよくよなどするもの 柴胡加竜骨牡蛎湯
(さいこかりゅうこつぼれいとう)
老人で下半身の脱力倦怠感のあるもの 八味地黄丸
(はちみじおうがん)
体力が弱く、疲れやすく、神経過敏のもの 補中益気湯
(ほちゅうえつきとう)
または
桂枝加竜骨牡蛎湯
(けいしかりゅうこつぼれいとう)

日本医師会雑誌より抜粋(一部改変)

現在、漢方薬は医療用漢方製剤として様々な医療機関でも用いられております。
漢方薬は複数の生薬を組み合わせて一つの処方として用いられており、「証」にあった漢方薬を服用することで効果が一層高まると考えられています。
また、漢方薬にも副作用があるので、医師の指示どおりに服用することが大切です。

<陰圧式陰茎勃起補助具(EVD)>
最近、日本で医療用具として認可された陰圧式陰茎勃起補助具(EVD)は、陰茎を陰圧にすることで陰茎海綿体内に血液を流入させ、勃起後は、陰茎の根元をリングで締め付けることにより、陰茎の勃起状態を維持するというものです。この用具は、ゲッティング・オズボーン氏が、自分の勃起不全を治療するために開発した用具が起源となっています。安全性が高く効果的であることから、 AUA(米国泌尿器科学会)が「器質性勃起不全の治療ガイドライン」の中で勧告している3つの治療方法の一つにまでなっています。

<陰茎海綿体内注射>
陰茎海綿体を広げて勃起させる薬剤(塩酸パパベリン、PGE1、フェントラミンなど)を陰茎に注射します。特にPGE1は比較的副作用が少ないこともあり、多く使用されています。米国では、「クエン酸シルデナフィル」の登場までは第一選択の治療方法でした。
この治療方法は効果も高く、確実に勃起することが特徴ですが、セックスの直前に注射しなければならないことが欠点です。日本では自己注射が認められていないことから、ほとんど行われていないのが現状です。

<陰茎プロステーシス>
陰茎プロステーシスは、陰茎海綿体内に棒(プロステーシス)をさしこみ、性交を可能にさせる方法です。現在、日本で使えるプロステーシスは3種類あり、よりよいプロステーシスの登場で満足度があがっているとのことです。手術を行う患者さんは、「パートナーのための手術である」ということを 充分に理解されているようです。ただし、この治療方法は、プロステーシス挿入後は確実に性交が可能となりますが、海綿体を破壊することや陰茎が冷たい等、違和感を訴える患者さんもいるようです。


以前はあきらめていた勃起不全も、現代医学の進歩により、様々な治療方法が開発されており、決してあきらめる必要のない病気となりました。
ひとりで悩んでばかりいないで、まずは専門医の先生に相談してみて下さい。
あなたに合った治療方法が見つかるはずです。


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